小保方さんが正しかった説がまた流れていますが、みなさん冷静に
昨日今日で
小保方博士のSTAP細胞は実際にあったと騒いでいるネット住民は少し落ち着いて
の記事がかなりバズっていて「どうして今更この記事がバズっているのだろう」と疑問に思っていたら
STAP現象、米国研究者Gが発表…小保方晴子氏の研究が正しかったことが証明
の記事がバズっていて、そこから僕の記事に流れていたらしい。
もう、何が何だか。
はっきり言わせてください。
3ヶ月も前に結論がついた論文をまたぶり返して、しかもbusiness journalというしっかりとしたメディアに掲載して、さらに論調が「研究自体の素晴らしさ」よりも「小保方さんは間違っていない」になっていて
キンガ博士に失礼!!!!
です。
キンガ博士の今回の研究内容はとても面白いものです。
筋組織の細胞にはサテライト細胞というものがくっついていて、筋組織が損傷するとそのサテライト細胞が新たな筋組織を作るようになるという現象は以前から知られていました。
スポーツ学的には筋肉痛のあとに筋肉が強くなる「超回復」と呼ばれる現象に近いでしょう。
キンガ博士の研究内容は、
筋組織が損傷して新たに再生する際には細胞の初期化のような現象が起こる
と、とても丁寧な実験をして証明したのです。
生物学的には、本当に面白い研究結果です。
それを、小保方さんのSTAP現象は事実だった。小保方さんは悪くなかった。
という論調に持って行くのはナンセンスであり、研究に対して失礼でしかありません。
“発想”と”証明”の価値を同程度に扱うのは科学的にありえない
小保方さん擁護派の主張をよく読んでみるとこんな感じ。
「今回のキンガ博士の研究は、外的な刺激によって細胞の初期化が起こることを証明した。これは小保方さんのいうSTAP現象と一緒だ!(STAPの正式名称は”刺激惹起性多能性”)だから小保方さんは間違ってなかった。小保方さんは無実だ!」
・・・
もう、この記事を書いた人は本当にサイエンスライターなのか疑問に思います。
確かに、僕が前回の記事で書いた通り、発想は似ています。
というかほぼ同じです。
小保方さんのアイデアである「細胞は外的な刺激によってリプログラミングされる」という考えは決して間違ってはいませんでした。
その点については、小保方さんの評価は見直すべきだと思います。
しかし、アイデアが間違っていなかったからといって、小保方さんは無実だなんてことは一切言えません。
小保方さんは、長い期間の再現実験のチャンスを与えられても、自分の方法(弱酸性の溶液に細胞を浸す)では、細胞の初期化を起こすことはできていませんでした。
科学の世界では「再現性・客観性」を持ってその現象を「証明」しなければ、アイデア自体になんの価値もありません。
キンガ博士は、論文を読む限りとても丁寧な研究者だと推察できます。
おそらく、丁寧に仮説を立て、綺麗な実験プランを練り上げ、見事、外的な刺激による細胞の初期化を証明したのでしょう。
この丁寧な仕事に対して
「小保方さんだって同じこと考えてたもん!アイデアは一緒だもん!小保方さんは悪くないもん!」
と、あれだけずさんな実験をしていた研究者を擁護するのは相手に対してものすごく失礼です。
巷では、小保方さんの再現実験の条件が厳しすぎて小保方さんが萎縮してしまってうまく実験できず、再現ができなかった。だから小保方さんの言うSTAP細胞の真偽はまだ不明だ!
や
再現実験自体も何か仕組まれていて小保方さんははめられた!
と主張する人もいますがそれも全くのナンセンスです。
STAP細胞問題が発覚してから、世界中の研究者がこの現象の再現実験をしてくれました。
Failure to replicate the STAP cell phenomenon
https://www.ipscell.com/stap-new-data/
中には超大御所の研究者もいます。
再現実験の費用はすべて向こう持ちです。
そして、彼ら全員が小保方さんの言うSTAP細胞の再現に成功していません。
ですから、小保方さんがNatureで発表した方法では、絶対にうまくいかないことがわかっているのです。
世界のベストアンドブライテストな研究者たちが理性を持ってこの問題に取り組んでくれたのに、「陰謀だ」、「仕組まれた」、「理研の隠蔽だ」などなど、これ以上、この問題を”こんな低レベルな議論で”振り返すならば、科学の発展の為、人類の進化の為に貴重な時間とお金を無償で使ってくれた世界中の研究者に対して冒涜になります。
と、これだけ言っても
「小保方さんの方法にはコツがあって、他人ではうまくいかない。だから小保方さんでしか成功しないです」
と反論してくる人がいますが、そんな人に対して僕からの一言
「自分しか成功しない実験方法なんて、科学じゃねーよ。てかそれ成功してねーよ」
科学者なら、「どうすれば誰でも客観的に成功するのか」をしっかりと調べてそれを論文に書いてください。
それが科学者の責任です。