日本の将来をがらりと変える凄すぎるバイオ系研究まとめ
このブログでは何度も紹介していますが、この国、日本の科学技術支援・科学技術教育支援は他の先進国に比べると貧弱すぎて日本の将来が心配になるほどです。
「大学、大学院の学費をなくせ」と騒ぐ若者はもう大人に期待するのはやめなよ
世界大学ランキングで日本の大学が全くランクインしていないと騒ぐ大人達に言いたい事
どうして大学院生はこんなにも不遇な境遇なのだろう:文系vs理系
大学院生に当たり前の様にただ働きをさせる教授はこの世から消えてほしい
ただ、これほどダメダメな日本ですが、まだまだ科学技術国の地位はキープしており、世界的に見てもとてもイノベーティブな研究をいくつも進めています。
科学技術というものは将来的に国の経済を著しく発展させ、多くの国民の生活水準を向上させます。
今日は、そんな日本の将来を変えてくれるような科学的研究を、バイオ(生物)の視点から紹介していきます。
日本の研究者ってすごいんですよ。
iPS細胞
もう日本で知らない人はいないでしょう。
京都大学の山中教授が発見したiPS細胞は、それまでのES細胞が抱えていた生物学的問題(生体拒否反応)や倫理的な問題(受精卵の提供)をすべて解決し、再生医療の仕組みをがらりと変えました。
現在、文字通り”世界中の研究機関”がこの無限の可能性を秘めた細胞を活用して臨床研究を始めています。
このiPS細胞の研究が進めばこれまで研究が進めづらかった難病研究や、臓器損傷患者への対応が可能になります。
可能性は「無限大」です。
詳しくは山中先生の講演会の動画で説明されていますのでそちらを参考にしてみてください。
蜘蛛の糸の人工合成
Spiber(蜘蛛の「spider」と「fiber」を組み合わせた名前)という日本企業が進めている研究で、蜘蛛の糸を遺伝子操作した大腸菌から人工的に生合成させるという研究です。
僕の感覚では、現在の日本のバイオ工学系研究で一番のポテンシャルと実現可能性を含んでいると研究と言っても過言ではないくらいのすばらしい研究です。
みなさん、蜘蛛に対するイメージってそのグロテスクな姿から
「きもい!」
「見たくもない!」
「この世から消えて!」
のような散々なものだと思いますが、実は蜘蛛が吐き出す糸の性質ってとてつもなくすごいのです。
よく聞かれる話では、鉛筆一本分の太さの蜘蛛の糸があればジェット機を止められる強度としなやかさを持っているぐらいの性質です。
この性質はどの工業的な繊維でも再現はできないとされています。
この蜘蛛の糸を人工的に大量生産可能にすれば、産業分野での活用が期待され、「資源産業の革命」が起こると予測されています。
その夢物語を実現した日本のパイオニアの動画が下の動画になります。
もう量産化の体制に入り、2016年からは製造過程に入るようです。
日本の若者すごい!
オーランチオキトリウムによる石油生産技術の確立
次はエネルギー分野からのエントリー。
こちらも割と有名な研究ですが、藻から石油を生産するという夢のような技術を研究している研究者たちがいます。
(研究機関は筑波大学と東北大学の共同研究です)
もともと藻類が石油(正確には重油のようなもの)を合成することは知られていましたが、オーランチオキトリウム(学名:Aurantiochytrium)という微生物は、普通の藻類と比べて10倍以上の石油生産力を持つことが明らかとなりました。
この性質を最大限に生かして、藻類から石油を生産し、工業界で利用しようという試みです。
2014年にはバイオマスプラントが設立され現在1リットル当たりの生産コストが155円程度までの技術になっているようです。
また、最近は藻類の石油(スクアレン)を輸送用燃料(ガソリンなど)に変換する技術を確立したようです。
夢が広がりますね。
さらなる技術の進歩が進めばガソリンよりも安くなって、実生活でも藻類から生まれた燃料が使われ始めるかもしれません。
日本は現在、石油の輸入を中東などに頼りきっており、戦争などが起きて万が一のケースに陥った場合、日本経済は停滞します。
また、東日本大震災以降エネルギー分野での新技術開発が求められています。
今回紹介した技術がもっと進歩して、日本がエネルギー分野での問題を克服できるようになればいいですね。
セルロースナノファイバー
次も資源分野から。
2015年には、森林分野のノーベル賞といわれる「マルクス・バーレンベリ賞」を受賞したほどの研究です(受賞者は磯貝明東大教授ら日本人研究者3人)。
木の細胞の表面(細胞壁)はセルロースという繊維で補強されているのですが、この「セルロース」を人工的にほどいて再構成した繊維材料がセルロースナノファイバーです。
セルロースナノファイバーは炭素繊維(カーボンナノチューブ)の1/6程度のコストで生成でき、強度も繊維としては最強レベル、そして軽いという、素材として万能なレベルです。
そして、もっとも注目すべき点は上記の写真の通り、透明な素材として活用できるのです。
ですから、自動車や飛行機のガラスの代わりとして利用すれば、より軽くて丈夫な機体ができますし、軽くなれば余計な燃料の消費が減ります。
また、セルロースナノファイバーは電気を通すという性質があるので、紙のような折り曲がるディスプレイを生産することが可能になります。
もう、産業界がこの技術には力を注いでいるので、あと10年以内にはかなりの技術進歩、そして実社会での実用化がされるでしょう。
すごいぞ日本。
バイオセンシング
バイオセンシングとは、生体の何かしらの分子情報を感知(センシング)する技術になります。
技術としてはかなり昔から研究されてはいますが、工業化を見据えた研究では日本は最先端にいます。
医学、農学、生命工学などの多様な分野での応用が期待されており、特に医療機器分野での活躍に大きな期待が寄せられているので、これからも研究はがんがん進むことでしょう。
例えば、がん患者にバイオセンサーを埋め込んで、がんマーカーの量を定期的に観測するという技術が将来的に可能になります。
この分野に関しては東京工業大学と東京農工大学の活躍が目覚ましいです。
下の動画は東京農工大学が開発した、糖尿病患者向けの継続的血糖値測定のデバイスの紹介動画です。
将来の医療はますます良くなりそうですね。
まとめとして
以上、日本のすごいバイオ系の研究を紹介していきました。
いやあ、日本って本当にすごいですね。
このまま研究が進むと、未来は一体どうなるのでしょうか。
確実に言えるのは
「未来は確実に良くなる」
ということでしょう。
是非とも日本の研究者・技術者のみなさんにはこれからも研究を頑張っていただき、日本、そして世界を変えていってほしいです。
そして、この記事を読んでいるみなさんにお願いがあります。
日本には世界に誇れる最先端の研究がある一方、研究者たちを最大限に援助するという心意気がありません。
日本政府の科学技術、そして科学技術教育支援に充てる税金も、先進国では最低クラスです。
例えば、日本の研究者のほとんどが「ポスドク」と呼ばれる低賃金かつ有期雇用の中で働いており、社会的身分が安定していません。
僕の知り合いの若手ポスドク(30代前半)は、月20万の給料(ボーナス、福利厚生などは一切なし。社会保険は最低限)で3年間の有期雇用という立場で働いています(3年後に確実にクビという現実)。
また、その20万円から月2万円程度、奨学金の返済をしているようです。
交通費の手当てもありません。
勤務時間なんてものはあるようでなく、毎日遅くまで実験しています。
教授から依頼された雑用の処理や、ラボの運営の手伝いまでしているようです。
大好きな彼女と結婚して家庭を持ちたいと言っていましたが、「この待遇では無理」としばらくは諦めているようです。
このような待遇で、研究者が”のびのび”かつ”真摯”に研究を進められるでしょうか。
日本の研究はこのような「若手研究者たちの犠牲」によって成り立っていると言っても過言ではないのです。
今回紹介した研究はバイオ系の研究の中でもかなり絞ったのですが、これ以外にも本当に夢のある研究が何個も進んでいます。
さらに、まだ芽は出ていないけれど、待遇は最悪だけど、日本の将来そして世界の将来がよりよくなるような研究を進めている若手の研究者がたくさんいます。
是非、そのような研究者たちの過酷な労働環境の実態を知ってください。
そして、是非ともそのような研究者たちを支援してあげてください。
日本をさらなる科学技術国として発展させるためには、政府に頼るだけではもう無理です。
一般市民のみなさんが研究に積極的に関わり、意見交換をしたり、余裕があれば少額でも資金の提供などをしてあげてください。
最近はAcademistという研究支援型のクラウドファンディングもようやく登場しました。
市民が科学技術に投資できるシステムが整備されてきたのです。
一人一人の力は小さくても、それが集まれば日本の研究の未来は確実に良くなります。
より良い研究が進むために、みなさんの助けが必要なんです。
どうぞよろしくお願いいたします。
この事実を広げるために、SNSで積極的にシェアしてくれると本当に嬉しいです。