「家族という病」という新書が駄本すぎて逆に面白いレベル

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今日は「家族という病」という新書の感想、いや批判をずらずらと書いていこうと思います。

 

 

 

「16万部突破!」

「現代の家族社会にメスを入れる」

 

という大々的なキャッチコピーに釣られて買ってしまいました。

下重暁子さんの新著「家族という病」

家族という病 (幻冬舎新書)

 

 

Amazonではベストセラーになっていましたね。

 

Amazonの商品ページによるとこんな風に紹介されています。

日本人の多くが「一家団欒」という言葉にあこがれ、そうあらねばならないという呪縛にとらわれている。しかし、そもそも「家族」とは、それほどすばらしいものなのか。実際には、家族がらみの事件やトラブルを挙げればキリがない。それなのになぜ、日本で「家族」は美化されるのか。一方で、「家族」という幻想に取り憑かれ、口を開けば家族の話しかしない人もいる。そんな人達を著者は「家族のことしか話題がない人はつまらない」「家族写真入りの年賀状は幸せの押し売り」と一刀両断。家族の実態をえぐりつつ、「家族とは何か」を提起する一冊。

 

こう紹介文を見ると

「お!面白そう!読んでみようかな!」

となるじゃないですか?

 

なるじゃないですか?

 

僕もその口なんですよ。

 

僕も、現代日本の家族中心社会に反対の立場で、例えば結婚式では親族がぞろぞろ集まったり、死んだら死んだで家族と同じ墓に入ったりするのは本当にバカらしいと思っていたんです。

選択的夫婦別姓にも賛成派。

この下重さんと同じ、個人主義者です。

 

 

でもね、でもね、この本、僕的には駄本過ぎてイライラするレベルなんです。

間違いなく、僕の人生でのワースト3に入る程の駄本です。

The 駄本 of 駄本です。

 

「自分と同じ立場の人がこんなにも稚拙な本を書いているなんて恥ずかしい!」

と思ってしまっている程です。

 

個人主義者の自分が家族主義者になりつつあります。

 

 

 

 

今日はそんな「家族という病」という本の酷さを語っていこうと思います。

 

この本を読んだ人全員が

「わかる!わかるよ!君!」

と共感してくれるような批判だと思います。

 

① この本に客観性という概念は皆無

この本が駄本であるとする一番の理由。

それは、客観的な説得力が皆無ということです。

普通、何かを評論する時には、客観的なデータを使って自分の主張を構築していきますよね?

しかし、この「家族という病」という本には客観的なデータが一切ないんです。

本当に一個も出てこないんです。

「私の経験から言うと〜」、「私の友人・知人では」、「私のまわりでも〜」「という話を良く聞く」、「という事が多い」と、すべて著者の友人や知り合いの話、もしくは自身の体験談から論評を繰り広げているのです。

国の統計資料なんて一切出てきません

 

こんな根拠のない主張をされても、こっちとしては

「本当かよ??!!!あんたの周りだけじゃないの???」

と突っ込みたくなります。

 

 

例えば序章にはこんな酷い文章があります(ちなみにこの文章を読んだ瞬間に駄本だと確信しました。結果大正解でした。)。

序章は「ほんとうはみな家族のことを知らない」というテーマ立てがされていて、「みんな自分の家族について知っているようで知らない。友達などの他人の方がわかり合っている」という主張をしようとしています。

筆者はその主張の根拠として自分の体験談をべらべらと記述していますが(この時点で客観性のない、酷い文章が続いているのですが)、最後の最後でとんでもない文章が出てきます。

 

筆者が自分の家族のことは何も知らないし、知る前に死別してしまったという所の記述です。

結局私は、父、母、兄の三人の家族と、わかり合う前に別れてしまった。私だけではない、多くの人達が家族を知らないうちに両親やきょうだいが何を考え感じていたのか確かめぬうち、別れてしまうのではないかという気がするのだ。

 

???

なんでしょう、この論理破綻は。 

この文章を簡単に言い換えると

 

私はこういう体験をした。

だから皆もそうではないだろうか?

 

となってしまいます。

 

あなたの人生が他人の人生と同じだというのでしょうか。

 

何も客観的なデータを出さずに、「皆もこうでしょ」と言われても、

「勝手に皆の意見を作り上げてんじゃねーよ」

と声を荒げて否定したくなります。

 

 

② 著者の勝手な思い込みが多すぎる

この本には著者の勝手な思い込みが多すぎます。

いきなり「〜だろう」「〜なはずだ」と、いきなり自分の意見を押し付けてきます。

 

例えば「結婚なんてろくなものじゃない」というテーマ内でのこちらの文章。

離婚もまた年々増える事はあっても、減る事はない。若者達は実にあっけらかんとしている。一緒になったと思ったら、あっという間に離婚する。・・・家族への幻想と期待がありすぎて、もろくも崩れてしまったのだろう。やはり家族に期待してはいけないのだ。「お互いに理解し合って離婚に到達した」などというセリフを聞くが、やはり修羅場はあったろう。

なぜ勝手に修羅場があったと決めつけるのでしょう。

本当に円満に終わっているかもしれないじゃないですか?

修羅場があるというならば、離婚をした夫婦何組かにアンケートを取るなりして下さい。

 

次も筆者の思い込みが酷い文章です。

 タブーがあればあるだけ、愛は燃え上がる。タブーでがんじがらめにされたかごの鳥は自由に羽ばたく事を夢見る。・・・それを考えると、現代人は勇気がない。人目を気にして仲のよい夫婦を演じ、心の通い合わない生活をそのまま続けている。

もうめちゃくちゃな意見です。

どこの現代人が良い夫婦を演じているのでしょうか?

私の周りの現代人は皆、本当に仲が良さそうですが?

そう言いたいのならば、何かしらデータを出せ!

 

 

次の文章なんかは、もうこの人は評論文を二度と書かない方が良いと思った程の酷い文章です。

この文章が納められている節は

「孤独死は不幸ではない」

という題です。

この題から想像するに、独居をしている人は実は楽しく生活しているという話が具体例やデータを交えて論じられると思いますよね?

もしくは「独居している人はそうでない人と比べてみてこうだから実は不幸ではないんだよ」という様な論じ方もあるかもしれません。

でも筆者はこう主張してこの節を終わるのです。

 

都会で独居してそのまま亡くなるケースを人々は悲惨だというが、はたしてそうだろうか。本人は一人暮らしを存分に楽しみ、自由に生きていたかもしれない。誰にも気づかれず、ひっそりこの世を去ることが希望だったかもしれない。

 

はい????

誰がそんな事を言ったのですか?

独居している人にインタビューをしたのですか?

何にもデータ出してないですよね?

 

「孤独死は不幸ではない」と言い切る理由が

「私がそう思うから!!!」

で終わっているんですよ。

 

もうこの本燃やしたいです。

 

 

イライラが溜まって来ていますが、こんなもんでは終わりません。

次はこちらの文章

日本人は知っている人には親切ではあるが知らない人には冷淡である。家族、親戚、知人とはこれ以上ないというほど結びつきを大切にするが、関係のない人には掌を返したよう。

はあ。

この人はもう頭がおかしいです。

財布を落としたらかなりの確率で交番に届けられる国はどこですか?

震災でたくさんのボランティアが自発的に被災地に乗り込んで行った国はどこですか?

日本人=冷酷とはあなた勝手なイメージです!

 

本当はあと10カ所ぐらいはありますが、最後はこちらの文章で締めることとしましょう。

 

盆と正月、必ずニュースになるのが帰省ラッシュである。高速道路に延々と続く車の列、新幹線の乗車率が百パーセントを超え、子供の手を握った親が、もう一方の手でキャリーバッグを引いている。「冬休み、何が楽しみ?」というリポーターの差し出すマイクに子供が答える。「おばあちゃんやおじいちゃんに会えること」「おもちつきと雪だるまを作ること」・・・・登場する家族はみな善人である。テレビの中で家族は善人でなければならないのだ。日々そうしたパターンを見せられている。

 

・・・・。

世の中にはおじいちゃんおばあちゃんに会えるのを本当に楽しみにしている家族はわんさかいるでしょうよ。

子供の純粋な気持ちを馬鹿にするあなたは最低の人間です。

 

 

③ ちょいちょい出る「私モテた自慢」が本当にうざい+失礼なレベル

さて、ここまでの批判でもうかなりお腹いっぱいなんですが、この本が「The 駄本 of 駄本」なのにはさらなる理由があります。

それは、よくわからない文脈で出てくる「私モテた自慢」です。

 

例えば次のような文章です。

放送局に勤めていた頃、様々な番組でインタビュアーをつとめることが多かった。

番組収録後、食事に誘われることがある。めんどうだナと思っても、出演者でもあるし、フィックスされた番組でコンビを組んでいる場合など、むげに断わるわけにもいかない。いやいやながら食事をすると、外交に出かけたからとお土産をもらうはめになる。角が立つので高価なものでなければ受け取る。

その番組が終わろうという日、食事に誘われた。「これで終わった」とほっとしてたら、その席上で私の家のことを色々と聞かれた。

・・・帰り際にこう言った。

「今度会う時までに、指のサイズを測ってきて下さい。

いったい何様のつもりだろうか。私がどう思っているかなど、他人の気持ちにおかまいなしの無神経さにもあきれかえった。何度か電話がきたが、私は二度と会わなかった。思い出すだけでも腹立たしく、それきりになった。

彼は東大での少壮学者だったが、その後も仕事で一緒になる、東大出のエリート先生にはこのタイプが少なくはない。

 

この文章はエリート家族にはろくな奴がいないという論旨で述べられた文章ですが、ここでさりげなく(といっても自慢したい感は丸見え)自分のモテ話を盛り込んできました。

どうして、自分が言い寄られた話をここで持ってきたのでしょか。

エリートを批判するならもっと他の話題あるだろ!と言いたくなってしまいます。

 

 

まあでも、ここだけだったらまだ許したんですが、次の文章が出てきたときにはもうこの下重さんとやらが大っ嫌いになりました。

次の文章は「相手の考えている事なんてわからない」という文脈で出てきたモテ自慢です。

 放送局に勤めていた頃、仲良くしていた男友達がいた。私の言う事は何でも聞いてくれ、一生懸命に尽くしてくれた。私にとってはありがたい存在ではあったが、心かき乱される相手ではなかった。ところが、十年ほどの間があって彼が死んだと聞いたとき、突然、その人の気持ちを理解していなかった事に気がついた。亡くなる一年前どうしても会いたいと言われたのに、忙しさにかまけて一日延ばしにしているうちに、亡くなってしまった。彼には言っておきたいことがあったのだろう。亡くなられてみると、そのことが心から離れない。

なんでしょう、この上から目線のモテ自慢は。いくら亡くなっているとはいえ、もしこれが本当だったとしたらひっそりと好意を持ってくれていた相手に失礼ではないですか?

「相手の考えている事なんてわからない」という主張をこの例で説得しようとしても全く説得力がないのに、さらに上からのモテた自慢が入っていて、この人は一体何を言いたかったんだろうと不思議に思ってしまいます。

 

てか全体的におばさんのグチを書いた本だった件

こうやってこの本に対する怒りを文章におこしていって、

 

「ああ、この本は評論ではないんだ。高齢期のおばさんのただの愚痴だ!」

 

ということに気づきました。

 

この本、客観性がないばかりか、文章の論理構成がめちゃくちゃなんです。

「なんでこの文脈でこの話題が出てきたんだろう」

という箇所がたっっっっっっくさんあります。

三種の神器の話が出てきたときには、本を投げつけたくなるほど意味がわからなかったです。

 

なので、この本は近所のおばさんが昼下がりにべらべら愚痴を言い合っている時の会話だと思うようにしました。

そしたらなんだか怒りが治まったような気がします。

でも、800円払ってただおばさんのグチを聞かされるなんてこっちが損し過ぎですけどね。

 

さて、あまりにも酷い本だったのでAmazonのレビューを見てみたら、みんな同じ意見だったようで安心しました。

いくつかを引用します。

ちょっと極端な印象

投稿者 Amazon カスタマー 投稿日 2015/5/4

形式: 新書

ご自身の家族の経験を、さも日本全体の家族の問題のように捉えていらっしゃるような。
ですので、ちょっと極端な印象でした。
チラシの裏にでも書いとけとはまさにこのこと。

投稿者 スローバーニング 投稿日 2015/5/21

形式: Kindle版

主観と自分の話ばかりで、よくこれで出版することになったなというのが正直な感想です。
データに基づく分析や考察はなく、読む人にとってはただの自慢話にしか読めないでしょう。
はっきり言ってあきれました。
(追記:同じ気持ち(というか状況や所得や年齢)の人が読めば、共感されることもあるだろうなとは思いましたが、
少なくともこの本を「社会学」のカテゴリに入れてほしくないです…)
投稿者 Amazon カスタマー 投稿日 2015/5/24
形式: 新書

自慢と愚痴ばかり…読んでてどんよりしてしまいました。書いてある内容はほとんどわかりきってることでありそれを承知の上で生きているんですけど…
投稿者
Amazon カスタマー – レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 家族という病 (幻冬舎新書) (新書)
レビューを書かずにはいられません。主観のみで、読むに値しない内容でした。タイトルからすごく期待したのに残念です。
みんな!わかる!わかるよその気持ち!
酷いよね!ありえないよね!
みなさん、書店で見かけてもこの本は買わない方が良いです。
なんの参考にもなりません。
どうしても読みたかったら、図書館で借りる程度にしましょう。
さらなる被害者が増えない事を祈ります。
科学と音楽と猫が好きなScientistです。

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